「骨吸収を抑制する薬剤に関連して生じる顎骨の壊死」のことです。具体的には骨粗しょう症に対して投与されるビスフォスフォネート製剤(商品名:フォサマック、アクトネル、ベネット、リカルボン、ボノテオ、ボンビバ、リクラストなど)と、デノスマブ(商品名:プラリア)の2製剤です。 同じ骨粗しょう症の薬剤でもビタミンD製剤(商品名:アルファロール、エディロールなど)、エストロゲン製剤(商品名:エビスタなど)、テリパラチド(商品名:テリボン・フォルテオ)を使用しても顎骨壊死は起こりません。 ビスフォスフォネート製剤を服用しても必ず顎骨壊死を発症する訳ではありません。 経口のビスフォスフォネート製剤であれば10万人年あたり1件程度といわれています。要するに「10万人の人が1年間経口ビスフォスフォネートを服用すると、約1名に顎骨壊死が生じる」という程度です。かなり低い確率という印象ですが、ビスフォスフォネートは年単位で骨に沈着してゆくので、服用が長期に及ぶと顎骨壊死のリスクは徐々に上昇します。4年以上の服用で顎骨壊死のリスクが上昇しはじめるという報告もあります。 なぜ顎骨にだけ壊死が起こる? ビスフォスフォネートやデノスマブは全身の骨に分布するのに、なぜ顎骨にだけ壊死が起こるのでしょうか。すべて理由が明らかにはなっていませんが、理由のひとつは顎骨がさらされている環境、つまり口腔内細菌の存在です。抜歯などの外科的処置を受けた場合、顎骨は口腔に直接むき出しになり、口腔内衛生環境の悪化が顎骨壊死の発症因子・増悪因子となるのです。 また顎骨にかかる咬合力も要因のひとつと考えられています。成人男子では平均で60kgもの力が毎日繰り返し顎骨にかかっています。さらに顎骨は全身の骨のなかでも新陳代謝がもっとも速い組織であるため、服用したビスフォスフォネートが顎骨に高濃度に沈着しやすいことも理由のひとつ考えられています。 一度顎骨壊死が発症してしまうと、顎の痛みや腫れ、排膿などの症状が出現し進行すると顎骨骨折をきたす場合があります。顎骨壊死の治療は非常に難治性である事が多く、長期間の投薬治療や手術が必要になることがあります。 顎骨壊死にとってもっとも大切なことはその予防です。顎骨壊死は感染が引き金となって発症・増悪します。したがって口腔衛生の改善と感染対策を徹底することが重要です。定期的な歯科クリーニングを欠かさないようにしましょう。 |